「渇いた心に響く鼓動 喉を潤し、微笑みましょう」
「ユラユラ揺れる緩い時 感じるままに身を浸す」
一つ一つに、物語が封じ込められたような古屋さんの作品。
大の読書家である彼女は、前回の個展ではご自身の思い入れのある「本」がテーマに描かれましたが、今回は反対に描いた作品に自ら短い詩をつける…という試みがされました。
制作するときには最初から画面を構成するというよりも、筆を運ぶうちにそこに在るべきモチーフが頭に浮かんで、描き進められることが多いのだそうです。そうして出来上がった作品は細やかに綴られた小説のように、観る人を静寂に満ちたイマジネーションの世界へと誘います。
もともと文学的だった古屋さんの世界が、最近は色調や構図のバリエーションが拡がり、ますます深みを増して濃厚になってきたのは、小説の挿絵などで様々な人物像、シチュエーションを描く機会が増えたことも影響しているのでしょう。
今回は花水木や曼珠沙華、紫君子蘭、アネモネなどの花だけを描いた作品も6点並びました。それらの作品は、いつもの人物が登場するものとはまた違ったアプローチで、今後の古屋さんの創作活動のまた新たな展開を感じさせるものでした。